会社で「生成AI」や「ChatGPT」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
「業務効率化だ」「DXだ」と騒がれていますが、正直なところ「自分の仕事のどこで使えるのか分からない」「変に使って失敗したくない」と感じている方が大半ではないでしょうか。毎日の業務に追われている中で、新しいツールの勉強に時間を割く余裕なんてないのが現実です。
この記事では、キラキラした未来の話は一切しません。 私たち会社員が、明日の業務で少し楽をするため、そして定時で帰るための「現実的なChatGPTの使い方」を3つだけ紹介します。
デスクでこっそり試せるレベルの、地味ですが確実な方法です。
ChatGPTは「優秀な新人」だと思え
まず、ChatGPTに対する認識を少し変えましょう。「何でも知っている魔法の箱」と思うと、嘘をつかれた時に失望します。また、「検索エンジンの代わり」として使うと、精度の低さにイライラすることになります。
一番しっくりくる使い方は、「仕事は早いが、少しおっちょこちょいな新人アシスタント」として扱うことです。

彼(ChatGPT)の特徴はこうです。
- 作業スピードは爆速:人間なら1時間かかる文章を数秒で作ります。
- 知識は広いが浅い:専門的な社内ルールや、最新の事情は知りません。
- 知ったかぶりをする:分からないことも、自信満々に嘘をつくことがあります(ハルシネーションと言います)。
- 指示待ち人間:具体的な指示がないと、当たり障りのない回答しかしません。
つまり、「責任と判断はあなた(上司)、作業はChatGPT(部下)」という分担が鉄則です。 新人に仕事を頼むとき、丸投げはしませんよね?「まずは下書きを作って」「この資料をまとめて」と指示し、上がってきたものをあなたがチェックして修正する。このプロセスこそが、会社員がAIを使う際の正解です。
完璧な成果物を求めず、「60点くらいの下書き」を作らせる。残りの40点を自分の手で仕上げる。これだけで、「0から1を生み出す」という一番エネルギーを使う工程をショートカットできます。
活用例① 資料作成の下書き
会議の議事録、企画書、日報。会社員生活はドキュメント作成の連続です。 一番時間がかかるのは、「白紙の状態から最初の一文字を書き出すまで」ではないでしょうか。構成を考え、言葉を選んでいるうちに時間が過ぎていく。この「初動の重さ」をAIに肩代わりさせます。
使いどころ
- 企画書の構成案出し
- 会議アジェンダの作成
- 業務マニュアルの目次作成

NG例
×「企画書を作って」 これでは範囲が広すぎて、教科書のような無難な回答しか返ってきません。結局使えず、自分で書き直す羽目になります。
そのまま使える指示文
企画書の構成案を作りたい場合、以下のように「役割」と「ゴール」を明確にして指示します。
#命令書 あなたはメーカーの営業企画担当です。 来期の「若手社員向けの販促キャンペーン」の企画書を作成します。 以下の要素を含めた、企画書の「目次構成」を提案してください。
#条件 ・ターゲット:20代〜30代の会社員 ・目的:自社アプリのダウンロード数増加 ・トーン:堅苦しくなく、親しみやすい雰囲気で
#出力形式 箇条書きで、各項目の要点を1行で補足すること
これだけで、たたき台が出てきます。あとは自社のフォーマットに合わせて、中身を埋めていけばOKです。「構成を考える」という脳のメモリを使わずに済みます。
活用例② 調査・要点整理
新しいプロジェクトのリサーチや、長文の資料を読み込む作業。これも骨が折れます。 ChatGPTは「整理整頓」が得意です。散らかった情報を渡して、「表にして」「要約して」と頼むと、驚くほどきれいにまとめてくれます。
使いどころ
- 長文メールやニュースの要約
- メリット・デメリットの洗い出し
- 競合他社との比較表作成(※情報は必ず裏取りが必要)
NG例
×「〇〇社の最新の売上を教えて」 最新情報や正確な数値データを聞くのは避けてください。ChatGPTは平気で架空の数字を創作します。数字や事実は必ず自分でGoogle検索や公式サイトで確認する必要があります。あくまで「論点の整理」に使いましょう。
そのまま使える指示文
例えば、上司から「A案とB案、どっちがいいか比較しておいて」と言われた時。自分でゼロから考える前に、AIに視点をもらいます。
#命令書 社内チャットツールの導入を検討しています。 「Slack」と「Microsoft Teams」について、それぞれの特徴を比較してください。
#出力形式 以下の項目を表形式でまとめてください。 ・主な機能 ・メリット ・デメリット ・向いている組織の特徴
出てきた表をそのままコピペするのではなく、これを見て「あ、確かにOffice製品を使っているからTeamsの方がコストメリットがあるな」と、自分の思考の補助線にするのが賢い使い方です。
活用例③ メール・文章作成
実はこれが一番「時短」を感じやすい使い方かもしれません。 謝罪メール、催促メール、案内文。内容は決まっているのに、「失礼がないように」「角が立たないように」と気を使って文章をこねくり回す時間。これが一番無駄です。
「言い回し」や「クッション言葉」の作成は、AIに任せましょう。
使いどころ
- 丁重な謝罪メール
- やんわりとしたお断りメール
- 社内向けの事務的な案内
- 日報の文章推敲
NG例
× 生成されたメールを読まずに送信ボタンを押す AIの文章は、たまに日本語として不自然だったり、過剰にへりくだりすぎたりします。必ず自分の目で読み、「自分の言葉」として違和感がないか修正してから送ってください。
そのまま使える指示文
書きにくい「お断りメール」の例です。箇条書きの要件だけで、丁寧な文章を作らせます。
#命令書 取引先からの「新商品の提案アポイント」を断るメールを作成してください。 相手との関係は良好なので、角が立たないよう、かつきっぱりと断りたいです。
#含める要素 ・提案への感謝 ・現在は予算の都合で新規導入が難しいこと ・また機会があればこちらから連絡すること
#トーン 礼儀正しく、ビジネスライクに
出力された文章の「てにをは」を直し、相手の会社名を入れるだけで送信完了です。5分悩むところが30秒で終わります。
ChatGPTの仕事活用でよくある失敗
最後に、会社員として絶対に避けるべき「落とし穴」について触れておきます。これさえ守れば、怒られることはありません。
1. 機密情報は絶対に入力しない

これが最大のタブーです。ChatGPTに入力した情報は、AIの学習データとして使われる可能性があります(設定でオフにすることも可能ですが、基本は「入力しない」が安全です)。
- NG:「顧客名簿のAさん、Bさんの住所を整理して」
- NG:「まだ未発表の〇〇プロジェクトの予算案をチェックして」
- 対策: 固有名詞は「A社」「B氏」のように伏せ字にするか、機密情報が含まれる文章はそもそも入力しない。これは会社のセキュリティルールに関わるので、厳守してください。
2. 「裏取り」をサボらない
前述の通り、AIはもっともらしく嘘をつきます。「ChatGPTがこう言っていたので」は、上司に対する言い訳になりません。 出力された内容はあくまで「参考情報」や「下書き」です。最終的な情報の正確性は、必ず人間のあなたが担保してください。
3. 最初から100点を目指さない
「もっと完璧な指示を出さなきゃ」とプロンプト(指示文)を練るのに30分かけていては本末転倒です。 ざっくり指示して、出てきた60点の回答を自分で80点、100点に修正する。その方が圧倒的に早いです。AIはあくまで「道具」です。使いこなすことに必死にならず、楽をするためにこき使ってやりましょう。
ChatGPTは、決してあなたの仕事を奪う敵ではありません。面倒な雑務を肩代わりしてくれる、都合のいいパートナーです。 まずは今日のメール返信、あるいは明日の会議のアジェンダ作りから。「ちょっと下書き作ってみてよ」くらいの軽い気持ちで、その実力を試してみてください。
意外と、使えるやつかもしれませんよ。

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